ExchangeOnline/Outlookのアイテム保持ポリシーについて
分かりやすくご説明します。
CONTENTS
■ アイテム保持ポリシーとは
アイテム保持ポリシーとは、期間(受信日又は
作成日)が過ぎたら自動的に【オンラインアーカイブメールボックスに移動】したり【削除】したり
するポリシーです。
容量ひっ迫を防げます。
※注:アーカイブポリシーはインプレースアーカイブが有効の場合にのみ動作
例:3年経過したアイテムはオンラインアーカイブへ移動
例:1年経過した
アイテムは自動削除
例:このフォルダのアイテムは削除もアーカイブもしない(永久保存)
「●年でアーカイブへ移動」「●年で削除」といったルール情報は保持タグが持っています。ポリシーはこれらの保持タグを集めたものです。(なので重要なのは保持タグ)
既定ではDefault MRM Policyが全メールボックスに割り当てられます(Exchange Online新規ユーザーに自動適用)これに対し私達は次の変更が可能です。
-
Default
MRM Policyのタグを変更(有効期間の変更等)又は無効にする【管理者】
-
新しいポリシーを作成(任意のタグを割り当て)してメールボックスに適用【管理者】
-
特定のOLフォルダにポリシー(タグ)を割り当てる【ユーザーで可能】
既定(Default
MRM Policy)以外のポリシーを適用するならExchange側でタグを追加したポリシーを作成し、メールボックスに適用します。又、ユーザーは自身で特定のフォルダにポリシー(※正確には個人タグ)を
適用できます。例えばこのフォルダのアイテムは自動でアーカイブしないといった設定が可能です。
Default MRM Policyには削除済みアイテム フォルダーからコンテンツを自動的に削除する既定のタグは含まれません。
■
タグの種類(3種類)
ルール情報が記載されるタグには3つの種類(既定DPT、既定フォルダRPT、個人)があります。
処理はアーカイブか削除でタグの優先度は強い順に【個人タグ】【既定フォルダタグ】【既定タグ】
です。
タグの種類 |
適用先 |
既定の既存タグの一例
(処理はアーカイブか削除) |
既定
(DPT) |
メールボックス全体 |
例 ◆ Default 2 Year move
to archive【アーカイブ】
→ 既定のDPTタグ。適用先はメールボックス
全体。2年経過したアイテムはアーカイブへ移動します。 |
既定フォルダタグ(RPT)
(保持ポリシータグ) |
既定のフォルダ
(受信トレイ等)
タグ作成時、割当フォルダを指定。 |
例 ◆
Juck Mail【削除】
→ 指定した既定のフォルダにのみ適用できるRPTタグ。JunkMail適用先は【迷惑メールフォルダ】。迷惑メールフォルダ内のアイテムは30日経過すると削除され回復可能なフォルダへ移動。
例 ◆ Recoverable Items
14 days move to archive【アーカイブ】
→ 適用先は【回復可能なフォルダ】。このフォルダのアイテムは14日経過するとアーカイブへ移動します。
※インプレースアーカイブが無効の場合は削除
※回復可能なフォルダとは偶発的または悪意のある削除から保護するフォルダ(要は証拠隠滅を防ぐ) |
個人タグ |
ユーザー作成のフォルダ |
個人用のタグはOutlookの任意のフォルダにユーザー自身で適用できます。※個人タグのうち、アーカイブ用は既定のフォルダにも適用可能。削除用は既定のフォルダには適用できません(既定のDPT、RPTが優先)
タグの例 ◆
Personal Never move to
archive 【アーカイブ】
→ 永久にアーカイブへ移動しない |
■ シナリオ例
管理者はAll Users Policyというポリシ−を作成し、次のように保持タグを格納しました。
-
2Years move to archive(既定タグDPT)対象:メールボックス →
2年でアーカイブへ移動(動作:アーカイブ)
-
Junk
Email(既定フォルダタグRPT)対象:迷惑メールフォルダ → 迷惑メールフォルダのアイテムは無期限で削除はしない(動作:削除)
-
Deleted
Item(既定フォルダタグRPT)対象:削除済みアイテム → 削除済みアイテムのアイテムは30日で削除して回復可能なフォルダへ(動作:削除)
-
Recoverable Items 30 days move to
archive(既定フォルダタグRPT)対象:回復可能なフォルダ → 回復可能なフォルダのアイテムは30日でアーカイブへ
(動作:アーカイブ)
又、ユーザーは自身で受信トレイに、個人タグであるPersonal
Never move to archive(動作:アーカイブ)
を適用しました。
◆結果◆
タグの優先度は強い順に【個人タグ】【既定フォルダタグ】【既定タグ】です。
まず、既定タグである”2年でアーカイブ
する”がメールボックス全体に適用
されます。”削除用”の既定タグはここではないので、メールボックス全体に対する削除アクションはありません。
「削除済みアイテム」「迷惑メールフォルダ」には削除用の既定フォルダタグが
適用される為、削除済みアイテム内のアイテムは30日で削除(&回復可能なフォルダへ移動
)し、迷惑メールフォルダ内は無期限で削除されません(注:ですがアーカイブ用の既定タグが2年で動作するので結局2年でアーカイブへ移動します。削除用タグとアーカイブ用タグはDPTとRPTでバッティングしません。格納期限が短い方で動作)
既定タグより強い、既定フォルダタグが「回復可能なフォルダ」では優先さ
れるため、回復可能なフォルダ内のアイテムは30日でアーカイブされます。
また、受信トレイには優先度最強である個人タグ”Personal
Never move to archive”が適用されているので、受信トレイのアイテムは永久にアーカイブされません。
(注:個人用の削除タグは既定のフォルダ(受信トレイや送信トレイ)に適用できませんが、個人用のアーカイブタグは既定のフォルダに適用
できます。よって削除用のDPT(既定)やRPT(既定フォルダ)が受信トレイに適用されていたとしても保存期間が短ければ
個人用アーカイブが優先)
■ 既定の保持タグ一覧(既定のタグと動作)
先にご紹介した通り、保持タグの型は3種類あります。
それらの型で作成された既定のタグの一覧です。
-
既定(DPT) …
メールボックス全体に適用される削除ポリシー&アーカイブポリシー
-
既定のフォルダタグ(RPT) … 既定のフォルダ(受信トレイや削除済みアイテムなど)に適用。アーカイブ用の既定のフォルダタグ(PRT)は作成できません。
●例:JunkMail →
【迷惑メールフォルダ】に適用。迷惑メールフォルダ内のアイテムは30日で削除されます(回復可能なフォルダーへ移動)※削除タグ ●例:Recoverable Items 14 days move to archive →【回復可能なフォルダ】に適用。このフォルダのアイテムは14日でアーカイブへ移動
※アーカイブタグ
-
個人タグ…ユーザー
作成のフォルダに適用可能(アーカイブ用でも削除用でも)既定のフォルダ(受信トレイ
など)にもアーカイブ用のタグは適用できますが、削除タグは適用できません。
名前と動作 |
タグ(型) |
保存(日)
|
動作 |
Default 2
year move to archive
アイテムが2年経過したらアーカイブへ移動 |
既定ポリシータグ (DPT)
→ DPTはメールボックス全体に動作 |
730 |
アーカイブ |
Recoverable Items 14 days move to
archive
回復可能なアイテムフォルダー内のアイテムは14日
経過したらアーカイブへ移動 |
既定のフォルダタグ(RPT)
→回復可能なアイテムフォルダーに動作 |
14 |
アーカイブ |
Personal 1 Year move
to archive
1年経過したアイテムはアーカイブへ移動 |
個人 |
365 |
アーカイブ |
Personal 5 Year move
to archive
5年経過したアイテムはアーカイブへ移動 |
個人 |
1825 |
アーカイブ |
Personal Never move to
archive
永久にアーカイブへ移動しない |
個人 |
なし |
アーカイブ |
1 Week Delete
1週間経過したら削除(回復は許可) |
個人 |
7 |
削除 |
1 Month Delete
1ヶ月経過したら削除(回復は許可) |
個人 |
30 |
削除 |
6 Month Delete
6ヶ月
経過したら削除(回復は許可) |
個人 |
180 |
削除 |
1 Year Delete
1 年で削除 |
個人 |
365 |
削除 |
5 Year Delete
5 年で削除 |
個人 |
1825 |
削除 |
Never Delete
永久に自動削除しない |
個人 |
該当なし |
削除 |
JUNK Mail
迷惑メール |
既定フォルダタグ (RPT) |
30 |
削除 |
■覚えておくべきポイント
-
管理者がメールボックスに適用するポリシーはボックス全体に作用(削除ポリシー/アーカイブポリシー)
-
アーカイブポリシーはインプレースアーカイブが有効なメールボックスにのみ動作
-
アイテム保持ポリシーとは保持タグが集まってできたルール
-
既定タグ(DPT=メールボックス全体に適用されるタグ)は1つのポリシーにarchive用のタグ、削除用のタグそれぞれ1つずつ格納可能(DPTで削除タグはあまり作らないかもしれませんが)
-
既定のフォルダ(受信トレイや送信済みアイテムなど)にはまず既定タグ(DPT)が適用されるが、既定フォルダタグ(RPT)で特定の既定フォルダを指定したタグがあればこちらが優先
-
個人タグは最強だが既定フォルダに適用できるのはアーカイブ用のタグのみ(削除用の個人タグは既定のフォルダには適用不可(DPTかRPT)
■ アイテム保持ポリシーの作成方法(管理者)
-
365管理センター→コンプライアンスをクリック
(又はMicrosoft
Purview コンプライアンス ポータルへ)
-
データライフサイクル管理 →
Exchange(従来型)をクリック
-
【MRMアイテム保持ポリシー】で「新しいポリシー」をクリック
-
「名前」に分かりやすいポリシー名を入力(例:Never Archive&Never Delete、等)
-
「タグの追加」をクリックし、任意の保持タグにチェックを入れ「追加」
-
「送信」をクリック
■
ポリシーを特定のメールボックスに適用する方法(管理者)
-
Exchange管理センター → メールボックスをクリック
-
任意のユーザー(メールボックス)をクリックし「メールボックス」をクリック
-
「アイテム保持ポリシー」にある「メールボックスポリシーの管理」をクリック
-
「アイテム保持ポリシー」から任意のポリシーを選択
※ポリシーの内容を変更すると、適用したメールボックスへ自動的に反映されます。
※適用したポリシーはメールボックスに適用されます。既定のフォルダ(受信トレイ等)へはこのポリシーが適用され
、削除ポリシーは変更できませんが、アーカイブポリシーは変更できます(個人用保持タグを設定)
ユーザーが作成したフォルダには親フォルダーのポリシーが継承されますが、自身で変更できます(削除ポリシーもアーカイブポリシーも)ユーザー作成のフォルダには保持
タグのうち「個人」タグを適用することができます。
■ ユーザー自身で特定のフォルダにポリシーを適用する方法
※ユーザー自身で個別にフォルダに適用できるのはExchangeのMRMアイテム保持タグに存在する個人用の保持タグのみです。
STEP1:ポリシー(保持タグ)を追加する
-
OWAを起動(https://outlook.office.com)
※ またはOutlookを起動→「ファイル」タブ→「アカウントの設定」下のURLをクリック
-
OWA右上の歯車アイコン(設定)をクリック
-
「アイテム保持ポリシー」をクリック
-
「+新しいポリシーを追加」をクリック
-
任意のポリシーにチェックを入れ(複数可)「保存」をクリック
→
ここに表示されるのはExchangeのMRMアイテム保持タグにある個人タグです。ここでチェックを入れたポリシーの中からフォルダ毎に選択できるようになります(なのでここでは全チェック
しておいてもOK)
STEP2:Outlookの各フォルダにポリシーを適用する
ー
既定のフォルダ(受信トレイ等)の場合 ー
※注!既定のフォルダにユーザーが適用できるのはアーカイブポリシー(正確にはアーカイブ用個人タグ)のみです。
削除タグ
-
受信トレイを右クリックし「プロパティ」
-
「ポリシー」タブをクリックし、オンラインアーカイブにある「次の日時以前のアイテムをアーカイブに移動する」リストから任意のものを選択する
ー
ユーザー作成のフォルダの場合 ー
-
フォルダを右クリックし「プロパティ」
-
「ポリシー」タブをクリックし、フォルダーのポリシーを選択し「OK」をクリック
※尚、ポリシーの変更には24Hかかる場合があります。
参考URL:ExchangeOnlineアイテム保持ポリシーを作成する
■ PowerShellでアイテム保持ポリシーを指定
1.
PowerShellを起動しExchangeOnlineに接続(初めてPSで接続する人はこちら)
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName
xxx@xx.com |
2. ポリシーを指定する
Set-Mailbox -Identity メールアドレス -Retentionpolicy
“ポリシー名” |
例:2年後にアーカイブへ移動するポリシー名がMRM
Policy (2 Year)なら・・・
Set-Mailbox -Identity
アドレス -Retentionpolicy “MRM Policy (2
Year)”
デフォルトポリシーに戻すなら
Set-Mailbox -Identity
アドレス -Retentionpolicy “Default MRM Policy”
現在のポリシ−を確認する
なら
Get-EXOMailbox
-Identity アドレス -PropertySets Policy | select RetentionPolicy
参考URL
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